今日の仕事。ファッション誌の撮影。
ドラマ等芝居の仕事を始めてからはめっきり少なくなりましたが、元々僕はモデル出身なのです。
雑誌専属なわけでもないので拘束時間も短く、場所も勝手知ったるスタジオだったので、1時に到着すれば上々だろうと思っていたのですが、
マネージャーからは12時過ぎには到着するように昨日連絡を受けました。
何かと思ったら…。
12時半頃、控え室にマネージャーが入ってきて、突然彼の携帯電話を差し出されました。
月曜日来てくれるかなー?いいともー!
…いいともですか!!
しかも雲雀君からの紹介でした。
「こういう事はちゃんと昨日のうちに伝えておきなさい…」
「すみません。少し前に一度お話ししたので、伝えた気になっていました」
突然人の携帯から雲雀君に話しかけられれば誰だって驚くでしょう。
しかし、あまりマネージャーを責めるのはやめておきます。
彼は実によくやってくれていますから。
スケジュール管理も完璧ですし、演技の仕事を増やしたいとわがままを言えばきっちりドラマや映画をおさえてきますし。
何より、仕事の内容に対して、あまり干渉してこないのが良いですね。
長い付き合いですから信頼してくれているのでしょう。
「あの、まだ返事をしていないのですが、実は車のCMのオファーが来ています。」
「ええ、構いませんよ?何故保留にしたのです?」
「それが、共演者が…」
少し言いにくそうに彼はジョットの名前を告げました。
僕と彼とが恋人なのを何となく察して、やりにくいのでは…と気を回してくれたのですね。
お心遣いは嬉しいのですが、心配には及びません。
僕達はプロですから。
「大丈夫です。受けて下さい」
「はい。差し出がましい事を、失礼致しました」
「いえ、僕の事を気遣ってくれたんでしょう?ありがとうございます」
にっこり微笑むと彼は眼鏡の奥で表情を隠すように目を伏せて、頬をわずかに染めるという初々しい反応を見せてくれました。
まったく、彼はマネージャーの鑑ですね。自分の取り扱う商品を好きだという事は、商売人として基本中の基本です。
彼のそんな所が、僕はとても気に入っています。
だって可愛いじゃないですか。あ、もちろん身内として、という意味ですがね。
さて、どうやら時間のようで、控え室にお呼びがかかりました。
僕が敢えて彼の赤い頬に触れて、いってきますと笑うと、彼は少し動揺を浮かべましたがすぐ事務的な無表情に戻って、一礼を。
「いってらっしゃいませ、骸様」
ただ、千種。君は一つだけわかっていませんね。
ジョットと一緒に仕事ができる数少ないチャンスを、僕が断るわけないでしょう。
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