30.Hot shot(ルキベル)
死ぬのは怖い。
誰だってそうだろう?
でも、例えば。
いずれ訪れる避けがたい死というものの、せめて死に方だけでも選択できるのであれば。
俺はお前に殺されたい。
黒光りするブローニングの銃口がこめかみに押し付けられる。
硬い存在を確かめて俺は情動を抑えるために熱い溜息を洩らす。
銃殺は、苦しまずに死ねる分だけ他の死よりも少し優しい。お前の手にかかるなら扼殺も十分に魅力的だが、あれは死に顔が汚くていけない。それじゃあ殺した後、死体に縋る気も失せるだろう?
最期にお前の顔を網膜に焼き付けてから死にたいのだが、その思いとは裏腹に俺はゆっくりと目を閉じる。閉じてから、引き金を引くお前の表情を目蓋の裏に思い描こうとして、でもどうしても想像できなくて、失敗したなと思ったが再び目を開く事はしなかった。
薄く唇を開いて息を吸い込む。
そうして銃声を待った。
「ベルナルド?」
目を開けると薄明かりの中でルキーノが
真っ直ぐに俺を見下ろしている。
どうやら意識が飛んでいたようだ。ほんの数秒の事だけれど。
大丈夫だという意味で何度か小さく頷いてみせると、ルキーノはにやりと意地の悪い笑い方をした。
「なんだ、もう限界か?」
ルキーノの高い鼻筋を辿って汗の雫が俺の唇の横に落ちる。涙よりも即物的な水滴を舌で舐め取ると、ルキーノがすうっと目を細めた。それは先程の夢で俺が見たかったルキーノの表情に酷似していたので、俺はわざと腹の内に収めているルキーノのものを締め付けてやる。
中で出していいかなんて今更な事を聞くから、どうしようもなく愛しくなってルキーノの首に腕を巻き付けて抱き寄せる。もう顔は見えなくてもいい。裸の胸が重なり合って同じスピードで脈打つ鼓動を感じる。
さあ、撃ち抜いてくれ。
俺はお前に殺されたい。