22.担え銃!(ルキベル)‏‏‏‏‏‏‏

「ベルナルド、お前の銃貸せ!」
「自分のはどうしたんだ」
「は!こんな奴相手に、弾がもったいねえよ」


ベルナルドは肩をすくめて、手だけを差し出してこちらを見ようともしないルキーノの掌に銃を乗せてやる。

撃鉄を起こす音。

銃口が相手の眉間にぴたりと押し当てられる。引き金を引く瞬間の、一瞬無表情になるルキーノの横顔を見つめて、深く息を吸い込んだ。


硝煙は、甘い匂いがした。








「この銃は何だ」
「何だと言われてもね」

全長12センチの銃はルキーノの手の中では余計に小さく見える。もう何年も前からこの銃身の短いコンシールド・ガンを使用しているのだが、ルキーノに見せるのは初めてだった。ベルナルドが自らの銃を抜く事は一年の内で数えるほどもない。

「便利だよ。小さいが、暴発の心配は極端に少ないからポケットに入れられる」
「銃は男の象徴だって言うぜ?」
「なるほど。だからお前の銃は連発式なわけだ。数打ちゃ当たる、と」
今 は一人に絞ってるだろうが」
「満足してるよ。大きさも威力も申し分ない」
「……誉められてる気がしねえな」

ベルナルドは笑って受け取った自らの銃を内ポケットにしまい、代わりにシガレットケースを取り出して中身を一本抜いた。すかさず横から手を出してきたルキーノにケースごと引き渡してやる。自分の煙草に火をつけて、そのライターをルキーノの方へと差し出した。
だが、ルキーノはそれを無言で押し退けると、顔を近づけて咥えた煙草の先を触れ合わせる。
火を見つめるルキーノの目蓋を間近に眺めて、火が移りやすいようにベルナルドもタイミングを合わせて注意深く煙草を吸いこんだ。邪魔だったのか、ルキーノの手はベルナルドの長い髪をかき上げる。意識していないような無造作な手つきで。
キスみたいだ、と煙草に火を移したルキーノが離れてから思った。

「実は、お前は銃を持っていないんじゃないかと疑ってたんだが」
「まさか。この商売でそれが許されるのは幸運の女神に愛されている男だけだ」
「それにしても、命 中率の悪そうな銃だな。今時フランスの貴婦人だってもっと大きな銃をハンドバッグに入れてるぞ」
「使い方次第だよ。少なくとも俺のは護身用じゃないからね」
「んじゃ、何用だ?」
「決まってる。人殺し用さ」

違いない、と笑って、ついさっき躊躇いもなく人間を撃ち殺したルキーノは旨そうに紫煙を吐き出した。