13、全てを捧げる朝(ジュリジャンルート)‏‏‏

空が白み始めている。

ベルナルドが割り出した敵の拠点の一つに俺達が乗り込んだのは真夜中の事である。到着してすぐにそこがアタリだと知れた。

無残に血を流した死骸が累々と横たわり、あちこちで火の手が上がる中、目下行方不明であったウチの重要人物が全員揃っていたからである。
もっとも彼らは三人とも、まったくの無事とは言い難い姿だった。
ジャンは傷だらけの上に気を失っていたし、アレッサンドロ親父はいつも通り気丈に振る舞っていたものの拷問の跡が明らかで、足元もふらついていた。
ジュリオもまた珍しく負傷しているらしかった。自分の流した血と、返り血とで汚れたジャケットを着たジュリオは、意識のないジャンを泣きそうな顔で抱きかかえていた。

負傷者である三人はとにかく早急に部下に連れて帰らせた。

残った俺とベルナルドはその広大な敷地と、そこを駆け回る兵隊たちを眺めていた。

念のため建物内も調べるよう命じてはいるが、今のところ生きた人間を発見したという報告はない。壊滅だ。さすがはマッドドッグ、とでもいうべきか。


「結局、こうなる事くらい、初めからわかっていたつもりだったんだけどね」

ベルナルドは見慣れた微苦笑を浮かべてそう呟いた。たぶん独り言だ。




ついさっき部下の手によって車に乗せられたジャンは、意識のないまま、それでもジュリオの手をしっかりと握りしめて放そうとしなかった。付き添うジュリオはその手を握り返して、ジャンのひどく青白い顔だけをじっと見つめていた。


堅く繋がれた手。ベルナルドも気付いていただろう。

他ならぬジャンが、ジュリオを選んだのだ。




馬鹿な男だ、とベルナルドを見てそう思う。

あの二人が互いに惹かれ合っているのなんか、双方とそう長い付き合いでもない俺ですら感付いたくらいだ。本当にジャンを奪われたくないのならば、全力で邪魔をするべきだったな。


だが、機械のように無表情なジュリオがジャンによって変えられていく事を好ましいと思ったならば。
そしてジャンの傍で浮かべるジュリオの笑顔に心を動かされたのならば。


お前の負けだよ、ベルナルド。二人の間に割って入るなど到底無理だな。


恋は戦争って言うだろう?死力を尽くさなきゃ勝てるはずもない。
どんな卑怯な手を使ってでも。



「ベルナルド」
「なんだ?」
「キスしていいか」
「……は?」

肩を掴んで、驚きの形に小さく開かれた唇を無理やり奪う。と言っても、ふいをつかれて完全に無防備なベルナルドに抵抗するヒマなんてなかっただろう。都合良く開いていたので軽く舌も差し入れてやる。

ほんの数秒で口付けから解放してやり、ベルナルドが何かしらの反応をする前に俺は何事もなかったように実に軽い口調で言う。

「さて、ここは部下に任せて、俺達もそろそろ戻ろうぜ。さすがに二晩連続で徹夜は堪える」
「もう若くないって証拠だよ、それは」

いつも通り、だが明らかに動揺を隠しきれない声でベルナルドは誤魔化すように笑って返した。
大人だから、キスくらい大した事じゃないって?そういうふりをしないと格好がつかないと思っている、か?

本当に馬鹿だな。
男にいきなりキスされたら、もっと騒ぐなり怒るなりしていいんだよ。年齢は関係ない。
そんな曖昧な態度を取るから悪い男につけこまれるんだ。

例えば俺とかにな。



これは戦争だ。持てる力全てを尽くして挑まなければならない。
正しい勝ち方を、これから身をもって教え込んでやるよ。