12、不忍(ラグベル)‏‏‏

「好きです」

「知ってる」



長い髪をした、僕の想い人は振り向きもせずにそう言った。



「愛しています」

「知ってるよ」



抑揚のない低い声。見えないけれど、きっと唇は薄く微笑んでいるだろう。
苦笑に近い笑い方。

もう何度も繰り返したやりとりだった。




毎回「知っている」と答えるベルナルドが、けれどそう言いながらも僕の言葉を信じていない事を僕はわかっていた。

本気ではないと思っているから、ベルナルドは微笑って応える。

そして僕はその誤解を解く努力をあえてしなかった。




どうせ叶わぬ想いなのだ。信じてくれなくても構わない。

ただ僕は僕の為だけに、嘘に偽装した愛の告白を繰り返す。



伝えられない苦しみというものがない分だけ、きっとこの片恋は他のそれよりも幸福に違いない。




「好きです」



先程と同じ言葉を囁いて僕の部屋のソファに座って寛いでいるベルナルドを後ろから抱き締める。


ベルナルドは、「邪魔だラグ、新聞が読めない」と実に不満そうな声を上げた。