10.今夜の嵐は荒れるだろう(ルキベル)‏‏

「ひどい雨だな。今夜は嵐か」


窓ガラスに容赦なく打ち付ける横殴りの雨を見て、ルキーノが呟いた。

窓の外は闇。狂ったように吹き荒れる風の軌跡も見えず、ただ空気と木々を揺らす音だけが響く。

「雨が降り続く。外の世界は全て水の下へ沈むのさ」


シャツも脱がずにベッドに寝転がったベルナルドは気だるい、しかし上機嫌な口振りでそう言った。窓辺でルキーノが振り返ると目を閉じてふふ、と笑う。これはかなり酔っている。一人でワインを一本弱開けていたから、当然か。


「大洪水が来る」
「40日間も外に出られないんじゃ困るな。仕事にならん」
「仕事なんかないさ。全て水に呑み込まれている。さあ、どうしようか」
「それじゃあ仕方ない。決まってるだろ、やる事は一つだ」


勢いをつけてベッドへ飛び込むと、ルキーノの重みでスプリングが豪快に弾む。
揺さぶられながらくすくす笑ったベルナルドは長い両腕をルキーノの方へ伸ばして抱き付いた。




「俺の方舟へようこそ」




ダブルベッドは二人で既に満員だから、つがいを乗せるスペースはない。

もしこのベッドが方舟なら、世界の生きとし生けるものは今夜限りで滅ぶしかないな。