5.俺の指を噛んで(ルキベル)
最中に、ベルナルドの血色の悪い唇をこじ開けて指を突っ込むと、薄い唇が食み、何の躊躇も恥じらいもなく指に舌を這わせてくる。生々しく濡れた肉の感触が指の腹をなぞってゆく。
半開きの口のベルナルドはひどくいやらしい顔をしていて俺の欲望をダイレクトに刺激するけれど、その反面胸の奥はちりっと焦げ付いたように痛んだ。
この歳で、しかもベルナルド相手に、初めての男になりたかったなどと頭の悪い事をほざく気は毛頭ないが。しかしこいつが、例えば花売りのフランス娘やパブのショーガールくらいとしか付き合っていなかったならば。熱い息を吐く絶妙のタイミング、巧みな舌遣い、そんなものにいちいち違う男の影がよぎる事もなかっただろうに。
今までベルナルドがどんな男と寝てきたかなど知りたくもないが、こいつは男とのセックスに慣れ過ぎていて、その上そういう慣れた仕草を見せる時のベルナルドは馬鹿みたいに色っぽくて、目にする度にそれを思わずにはいられなくなる。
ずっと前、少しの間だけ付き合っていた女が「過去のある男の方がミステリアスで素敵」と言っていた。一理ある、と言いたいところだがその境地に達するまではもう少し時間がかかりそうだ。
いや、待て。ハニーブロンドを揺らせて笑った女はたしか当時19歳だった。
まずいな、とっくの昔に過ぎているじゃないか。
自分の思考回路の阿呆らしさにちょっと笑うと、ベルナルドは指をくわえたまま怪訝そうな表情で俺を見上げる。ああ、その上目遣いはイイな。
俺は何でもないという意味で首を横に振る。
もういい、と低く囁いて、ベルナルドの口内から指を引き抜く、寸前。
「……痛っ」
ベルナルドが、俺の指を噛んだ。
血が出ない程度には緩く、甘噛みよりはきつく。
思わず声を上げた俺に、ベルナルドはしてやったりという顔で笑った。
「嫉妬が年下の専売特許だと思うなよ?」
まさに今、昔の女の事を考えていた俺は、カマを掛けているにしたって鋭すぎるその言葉に内心ギクリとする。だがそれは後ろめたさ3割、愉快さ7割だ。
可愛い年上の恋人が噛んだ、明日には消えてしまうであろう歯の痕を舐めて、俺は笑う。
過去なんかいらない。そのかわり、未来は全部俺にくれよ。